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残業代が出ない 弁護士への相談を考えている方へ

会社が残業代を払ってくれません。
払わなければいけないものと決まっているのではないんですか?

労働に対価を支払うことは、法律で決まっているルールです。
払うべきものを払わないのは、れっきとした違法行為であり、時には刑事罰も課されます。

うちは残業代が出ないと最初から言ってある。
同意して入ってきたんでしょ?

などという会社もありそうですが、通用しません。
残業代を払うことは法律で決まっており、会社が守らなければならない最低限の義務です。

会社を縛るために存在するルールなのですから、無視することはできません。 各自治体で定められている最低賃金に会社が縛られるのと同じ理屈です。

違うのよ、残業代を払っていないんじゃなくて、毎月のお給料の中に含まれているのよ。

という会社もありますが、原則としてこれもアウトです。
会社の勝手な解釈一つで最低限の義務をすり抜けることはできません。

含まれているというなら具体的にいくらが基本給でいくらが残業代なのか、会社は予め明示していなければいけません。 最低でもこれが条件です。

うちの会社はいくら働いても残業代は月5万円と決まっています・・。

固定残業代制といいます。
直ちに違法ではありませんが、無意味です。

固定分を超えた額については、どのみち会社は支払わなければいけませんし、 加えて近年では裁判所の判断も会社に相当に厳しいものとなっており、制度自体が無効とされることも多いです。

でも、いくら法律を言っても、うちの社長は聞く耳持たないと思います。 弁護士から言ってもらえれば、素直に払うんでしょうか?
残念ながら、そこまで簡単にはいかないと思ってください。 会社は何かしら反論をしてくるでしょう。
弁護士に対しても強気の態度をとってくるんですか?
こちらの要求に素直に応じる会社はこれまでほとんどありませんでした。 こちらが弁護士をつければ向こうもつけてきます。 向こうの弁護士が何も言わず引き下がることはありませんから、とりあえず争いになると思ってください。
裁判なんてできればやりたくないんですけど・・。

残業代だけを争点に裁判までいくことは多くありません。
私の経験では1〜2割ぐらいでしょうか。他の事案に比べて和解(示談)でまとまりやすい傾向にあります。

ただこちらの要求を全面的に受け入れる会社は少ないと思ってください。

でも払わなきゃいけないものを請求してるだけなのに、会社に正当な言い分なんてあるんですか?

それが意外にも、争おうと思えば会社はそれなりに争点を作れてしまうのです。 とうてい認められないであろう主張を、悪あがきのようにしてくることも多いです。

悪あがきでもそれに反論しなければこちらが負けてしまうので、 裁判になれば激しく争うことになります。

何を請求できるのか

請求することになるのは、大きく次の3つです。↓

  • 時間外労働の賃金
  • カウントされていない労働時間
  • 付加金

請求その1. 時間外労働の賃金

残業には次の2種類があります。↓

  • 法外残業(法定時間外労働)

    1日8時間か、1週に40時間(法定労働時間といいます)を超える分の労働時間。
  • 法内残業(法内時間外労働)

    法定労働時間は超えないが、契約で決まっている労働時間(例えば1日7時間など)を超える分。

原則として「1」の法外残業については、
最低でも25%の割増賃金をつける決まりになっています。

残業は高くつくということですね。

はい、これは労働者へのねぎらいのためではありません。
会社に割増賃金を払わせることで超勤を抑止しようという目的です。

労基署や裁判所は時間外労働を、なるべくさせるべきではないもの、と考えているのです。この点を知らない経営者は多いかもしれません。

他にも様々な割増ルールが存在します。↓
これらは全て広い意味で「残業代」です。正しく支払われているかこちらでチェックし、まとめて請求します。

法外残業 25%以上の割増
休日労働 35%以上の割増
深夜労働 25%以上の割増
法外残業+深夜労働 50%以上の割増
休日+深夜労働 60%以上の割増

さらに、現在は大手企業のみに適用されることになっていますが、 法外残業が月に60時間を超えた分のルールがあります。↓

法外残業 50%以上の割増
法外残業+深夜労働 75%以上の割増

ここでいう大手企業とは、

小売業 資本金が5000万円を超えるか、従業員が50人を超える
サービス業 資本金が5000万円を超えるか、従業員が100人を超える
卸売業 資本金が1億円を超えるか、従業員が100人を超える
その他 資本金が3億円を超えるか、従業員が300人を超える

をいいます。

法で定められた割増賃金の他にも、会社ローカルのルールで割増が設定されているかもしれません。 就業規則を確かめます。

請求その2. カウントされていない労働時間

手待ち時間、仮眠時間は労働時間に当たるものですが、会社は休憩時間としているかもしれません。 その場合、請求額がかなり増える可能性があります。

その他、着替え、準備・後片付け、朝礼、参加した会社行事、など、労働時間となりうるものは多々あります。

依頼人もそのことを知らなかったり、弁護士に話すのを忘れたりしますから、 どんな作業をしていたのか弁護士が丁寧にヒアリングし、請求漏れのないようにします。

請求その3. 付加金

裁判となれば、会社に付加金も併せて請求します。
付加金とは、裁判所が会社に命じる罰金のようなものです。

残業代は払わなかったもの勝ち。
だって最初から払うのも、裁判に負けて払うのも一緒じゃないか。

という考えを抑止するためでしょうか、

  • 時間外勤務
  • 深夜勤務
  • 休日勤務

この3つへの未払い賃金に対して、裁判所は同額を上限とした、付加金の支払いを命じることができるのです。 受け取れるのは不払いをされた労働者です。

ということは残業代を2倍もらえるんですか?

一応そういうことです。
100万円のサービス残業には、プラスで100万円の付加金がつくかもしれません。

しかし現実には、

  • 必ずもらえるわけではない

    悪質だと判断されたケースのみであり、いわば裁判官の気分次第。
  • 判決を取らないともらえない

    和解で解決した場合は受け取れない。(請求できない)
  • 労働審判では受け取れない
  • 会社は控訴することで支払いを回避できる

という欠点があり、特に「4」のために、あまり意味のないものになっていると言わざるを得ません。 どういうことかというと、

残業代を100万円、付加金を100万円で、合計200万円払いなさい

という判決を受けたとき、会社はすかさず控訴をします。
そして上級審の判決が下る前・・正確には事実審の口頭弁論終結時まで・・に、(付加金を除いた)未払い残業代100万円だけを労働者に払ってしまうのです。

付加金は残業代を払わなかった会社への制裁金なので、判決が下りる前に払ってしまえば、 上級審の裁判官はもう会社に付加金を命じることができません。

もう払ったんだから制裁は要らないでしょう。

というわけです。釈然としないでしょうが、そういう仕組みです。
会社の気持ち一つで制裁金の支払いが回避できてしまうのです。

つまり付加金は事実上、受け取れないんですか?

そのぐらいに思っておくのが良いです。

きちんと受け取れるのであれば、誰もが訴訟という手段を選び判決を取ろうとするはずです。 受け取れないとわかっているからこそ、和解や労働審判での解決を求める人が多いということです。

残業代の計算方法

「あなたの時給×未払い分の労働時間」
これに深夜労働・休日労働などの割増を加えます。

月給でもらっているので、自分の時給なんて知らないんですが。

月給制でも年俸制でも、時給を求めることはできます。

大雑把に言うと、まず就業規則を元に、あなたの1年間の所定の(実際の労働日数ではなく予定されていた正規の)労働日数を数えます。 例えばそれが216日だったとします。

それを12で割れば1ヶ月の正規労働日数が出ます。
ここではそれは18日となります。

あとは月給をその18日で割れば日給がわかり、それを1日の正規の労働時間(契約で決まっているもの、例えば7時間)で割れば、時給が出るという具合です。

1年の正規の労働日数は年によって変動します。
したがって時給は年ごとに求めることになります。

他にも各種手当を計算に含めるか、など色々考えるべきことがあり、正確に計算しようとすればなかなか大変な作業です。

最近の会社の中にはわざと(?)なのか、迷路のように入り組んだ給与体系を取っているところがあり、 弁護士の私でも時給の計算に頭が痛くなることがあります。

請求の方法

弁護士をつけたときは、まず会社との交渉が始まります。 多くが和解で解決しますが、決裂したときは裁判となります。

  • 訴訟(通常の裁判)
  • 労働審判

という、大きく2つの手段があります。

労働審判とは労働事件専用の、いわば小型の裁判です。
3ヶ月ほどでのスピード解決を望めるということで、人気が高まっています。

そのかわり、短い時間でザクっと判断されますから、複雑な事件には向きません。

残業代請求は意外と争点が多く、また数字をめぐって細かい争いとなります。 いざ法廷での争いとなれば激しいものとなるため、向かないとされていました。

ところが現実には、労働審判のほうが人気のようです。

向かないのになぜ人気なんですか?
やってみたら何とかなったといいますか、 訴訟であれば細部で激しく争うのが当たり前でも、労働審判となれば互いに妥協するムードとなり、 細部の対立がさほど問題にならなかったのです。 労働者にとって満足のいく解決が図られることがわかりました。
じゃあ労働審判を選べばいいんですか?

弁護士と相談して決めるのが良いでしょう。 交渉時点で相手方との開きが大きいのであれば、訴訟のほうが良いと思います。

審判(結果)に異議があれば、結局は訴訟になるからです。

私は事件を受任した時点で、ひとまず訴訟を起こす前提で準備を始めます。 訴訟にも通用する証拠を揃えておけば、労働審判にも容易に移行できます。

解決までの時間

交渉(和解) 1〜3ヶ月
労働審判 3ヶ月
訴訟 1年〜1年半

といったところでしょうか。

しかしこれには準備期間が含まれていません。
事件を受任してから会社に最初のコンタクトを取るまでに、事実を把握したり証拠を揃えたりといった準備期間があります。

ここに時間をかけることが最も重要であり、どれぐらいかかるかははっきりと言えません。 時効の問題も見据えつつ、充分な時間をかけます。

判決を取るまでには1年半もかかるんですか?

1年ぐらいが多いと思いますが、2年かかる場合さえあります。 とはいえ、それは手続きがスローペースで進むからに過ぎず、その間に依頼者にして頂くことはそう多くはありません。

ですので、想像されるほどの負担ではないと思います。

当事務所では、事件の多くが交渉による和解で解決しています。
訴訟や労働審判になるのは、1〜2割といったところです。

弁護士費用

当事務所の弁護士費用は、こちらのページをご覧ください。
弁護士会の基準に従っていますから、業界の標準的な金額といって良いでしょう。

なお、費用は請求額によって変わるものですが、当事務所では付加金は請求額に入れないことにしています。 既に述べた通り、付加金は受け取れない可能性が高いからです。これも業界標準の方法です。

せっかく残業代を取り戻せても、弁護士費用を払えばほとんど残らない、 なんてこともあるんでしょうか?
一般には、請求額100万円が、弁護士をつけるラインとされています。 個々の価値観もありますが、その場合であれば、勝っても費用倒れ、ということにはならないと思います。
50万円ぐらいだと、弁護士をつけるのは難しいということですか?

それだけでいくのは難しいかもしれません。

しかし他にも退職金などを請求できる可能性がありますし、 本人が考えている以上に残業時間があった、というケースもあります。 よろしければ、無料相談をご活用ください。

事例で見る

いくつかの事例ごとに、弁護士費用を求めてみます。
あくまで当事務所のものですが、業界の相場といって良いと思います。

Case1
示談交渉で100万円を請求し、80万円を獲得した場合

11万円

14万800円

25万800円

  • 事案により前後30%の範囲で増減があり得ます。
  • 収入印紙代や郵便切手代などの実費、日当は含まれておりません。
Case2
示談交渉で100万円を請求したがまとまらず、そこで諦めた場合

11万円

0円

11万円

  • 事案により前後30%の範囲で増減があり得ます。
  • 収入印紙代や郵便切手代などの実費、日当は含まれておりません。
Case3
示談交渉で300万円を請求したがまとまらず、訴訟を起こし300万円を請求し、全額獲得できた場合

30万8000円

52万8000円

83万6000円

  • 事案により前後30%の範囲で増減があり得ます。
  • 収入印紙代や郵便切手代などの実費、日当は含まれておりません。
  • 控訴や上告をした場合の費用は含まれておりません。

なお、残業代請求については、事案にもよりますが、着手金を通常より抑え、そのぶん報酬金を引き上げる、という取り扱いも可能です。

請求のタイミング

未払い賃金を会社に請求するタイミングは大抵、会社を辞める直前か、辞めた後、のどちらかです。 辞めてしまうとタイムカードなどの証拠集めのハードルが上がるので、在職中にご相談いただくほうが望ましいです。

なお、請求の時効は2年(または3年)ですから、既に退職している方は急がれたほうが良いでしょう。

2020年4月1日以降に支払われるはずだった分については、時効が3年となります。
会社に残りながら請求するのは難しいでしょうか?

今後も会社に残るつもりの人が請求することは稀です。
やはり相当に強くなければできるものではありません。

会社は辞めたくないけれど残業代は払ってほしい。
そういう人はどうすればいいんですか?

残念ですがこれといった手がありません。

社内に仲間を作って集団で交渉するであるとか、労基署に匿名で申告するなどが一応考えられますが、 労基署がどこまで対応してくれるかわかりませんし、仲間を募るのも多くの人にとってハードルが高いでしょう。

残業代を我慢してまでも残る価値のある会社かどうか、を考えるしかないのが現実となっています。

いずれ会社を辞めるかもしれません。
今のうちにやっておいた方がいいことはあるでしょうか?

証拠の確保です。裁判をする上でもっとも難しいのは、残業をした証拠がないときです。 証拠の残し方を弁護士に相談しておくと良いでしょう。

最も重要な証拠はタイムカードのコピーですが、タイムカードがない・あっても押させてもらえない、といった場合には工夫が必要となります。 ぜひご相談ください。

証拠

残業の証拠となるものは・・

  • タイムカードのコピー・ICカード等の記録
  • 日報などの記録・提出書類
  • パソコンのログやメールなどの記録
  • 元同僚や取引先の証言
  • 仕事をしたことを記した日記・メモ・SNS

などで、最も証拠価値が高いのはタイムカードのコピーです。
例えばこれがパソコンのログやメール等の記録となると、

その時ふらっと戻ってきただけで、ずっと会社にいたわけではないだろう!
会社に残っていたって、ほとんどの時間は遊んでいたんでしょ!

という主張をされやすいので、やや証拠としての弱さがあります。
それでも強い証拠です。

一方、日記やメモなどは基本的には証拠価値が低いです。
しかし信用性の問題なので、内容しだいでは有力な証拠となりえます。

私が扱ったとある女性の案件では、彼女がとても几帳面に手帳に記録をつけていました。 退勤時刻だけではなく、始業時刻、その日1日にした仕事の内容、上司から言われたこと、さらには前の会社にいた時の記録まであり、満足のいく解決へとつながりました。

とはいえやはり欲しい証拠はタイムカードのコピーです。
タイムカードがあれば裁判は基本的にはこちら有利で進むといっていいでしょう。

タイムカードのコピーを取る前に会社を辞めてしまったんですが・・。

退職後も会社にはタイムカードの保存義務(3年)があります。 しかし、出すよう求めても無視をされたり捨てたと嘘をつかれる恐れもあり、素直に出してくれるとは限りません。

怖いのはこちらが請求をしたことがきっかけで、タイムカードを捨てられてしまう可能性です。

その場合何かペナルティはないんですか?
タイムカードを捨てたのは会社の落ち度なんですから、会社がツケを払うべきでは?

と考えたくなりますが、会社が法を破ったことと、労働者の主張する残業時間が正しいかどうか、は別の問題となってしまいます。

結局、タイムカードを捨てられた、または最初からないという場合は、 何とか他の方法で残業時間を立証しなさい、とツケがこちらに回ってきてしまうのです。 理不尽ではありますが、そういうものと思うしかありません。

とはいえ、タイムカードを捨てた(労働時間を管理してこなかった)会社の落ち度を、労働者に不利益に扱うべきではない、 という主張は、どちらに転ぶかわからない状況において、最後の一押しとして有効となる場合もあります。

証拠保全の手続き

タイムカードのコピー(やその他の証拠)が手許にないけれど、会社にはまだあるはず、という場合には、 証拠保全の手続きを裁判所に申立てることができます。

要するに会社に乗り込んで、証拠が捨てられる前に差し押えようということです。

証拠を出しなさい

会社の協力がなくとも証拠を得られるのは嬉しいのですが、

  • 証拠のある場所をわかっていなければいけない

    会社のどこかにあります、ではダメで、証拠が具体的に会社のどこにあるのか裁判所に伝えなければいけない。 裁判所が探してくれるわけではない。
  • 裁判所の腰が重い

    無条件に応じてくれるわけではなく、「悪質な会社だから証拠を捨てる恐れがある」などと保全の必要性を裁判所に訴えなければならない。 しかもそれが会社に伝わり、会社との関係がこじれる。

で、いま一つ使い勝手のよろしくない制度です。

ですので、タイムカードなどの証拠品を会社に請求する場合は、 証拠保全を申し立てるべきなのか、まずは正面から請求してみるべきなのか(廃棄される恐れもある)、それとも他に入手する方法があるのか、 いつも悩まされます。

会社はどんな反論をしてくるのか

既に述べたように、弁護士をつけて会社に残業代を請求しても、素直に応じる会社は稀です。

こちらが弁護士をつければ向こうもつけてきます。
向こうの弁護士が何も言わず引き下がることはないので、とりあえず争いになると思ってください。

でも会社に正当な言い分なんてあるんですか?

正当なものから苦し紛れまで、色々と言ってきます。
ざっと見ていくことにしましょう。

残業代は出ないという条件で採用している。

先に述べたように、これは法的に通りません。
残業代を払うことは法律で決まっている最低限の義務です。

残業代はお給料の中に含まれているの。

これも既に触れました。含まれているというなら具体的にいくらが基本給でいくらが残業代なのか、会社は就業規則などで示していなければいけません。最低でもそれが条件で、それでも簡単には通りません。

年俸制だから残業代はセットになっているの。

なりません。 経営者は往々にして、込み込みでこの金額なんだ、と考えたがりますが、法は容易にそれを認めません。

残業代は毎月5万円と定額で払っているんだ。

固定残業代制は無意味です。無効と判断されることも多く、有効の場合でも、固定分を超えた残業について会社は支払わなければいけません。

だったら逆に、残業が5万円に満たなかった月の払い過ぎた分を返せ!

それについては会社が労働を免除したという扱いになります。
返還する義務はありません。

〇〇手当が実は残業代の代わりだったんだ。

固定残業代制の一種ですが、予めその旨を労働者に伝えていなかったという点で、さらに苦しいでしょう。

管理職には残業代を払う必要がないのよ!

それ自体は正しいですが、管理職であると裁判官に認められるためのハードルは相当に高く、 多くの場合あてはまりません。

なお、管理監督者に該当する場合であっても、深夜労働については深夜割増賃金を支払う義務があります。
残業なんて命じてない。勝手にやったものにお金は払えない!

明示的な命令がなくても、黙認していたのなら指示があったのと同じです。

残業は禁止していました!

禁止と言いつつ黙認していたり、残業を前提とした量の仕事を与えている会社が多いです。 それでは本気の命令といえないでしょう。

他にも、

みなし労働時間制だった。

だの

請負労働だったのよ!

など色々な反論がくるのですが、
ここまで見てきたものは、どちらかといえば苦し紛れでなされるというか、それほど怖さを感じないことが多いです。

私がどちらかといえば嫌なのは、

働いたことになっているけど、実際には遊んでいた時間が相当あった。 だからその分は払わない。

といった主張のほうです。 必ずと言っていいほど、会社はこれを主張してきます。タイムカードは実際の労働時間を表していないというのです。

サービス残業の最中というのは、労働者のほうもフラッと外食に出たりなど、けっこう自由気ままに働いていることがあります。

会社もどうせ残業代を払わないのだからと、それに口を出しません。 だから働いていなかった時間があるといっても、具体的な時間が会社にもこちらにもわからないのです。

その場合はどうなるんですか?

労働時間を把握するのは会社の義務であり、それを怠った非が会社にはあります。 ということで、

仕事をしていなかった時間が正確にわからない以上、会社は全額を払いなさい

と裁判官は命じるかもしれません。

しかしどうも働いていなかった時間が相当にありそうだ、 と裁判官が判断すれば、

タイムカードは信用できず、全額を会社に払わせるのはかわいそうなので、半分だけ払いなさい

といった判決が出るかもしれません、またはそうした条件での和解を強く勧めてくるかもしれません。 裁判官は実質を見てきます。

争う金額が大きくなれば、会社も必死です。↓

そんな時間のかかる仕事、任せていない!
何の仕事をしてたっていうの?
成果物を出してみろ!

など色々言ってきます。
言い返せなければ、どうなるかわかりません。

タイムカードがあるからこちらが有利だと油断していると、思わぬ反撃にあいます。 会社から何を言われても答えられるように、準備を怠らないことです。

準備ってなんでしょうか?

といえば、ヒアリングです。
弁護士が依頼人についてよく知ることです。

事件を部分的に理解するのではなく、 依頼人がどのような仕事をどんな風に行っていたのか、弁護士がトータルで理解し自分のものにすれば、 会社から思わぬ反論がきても動じることはなくなります。

そのため、私は依頼人にこうお願いすることにしています。

あなたがしていた仕事を私にプレゼンテーションしてみてください

インターネット等でその業界について調べ、必要とあらば業界についての本も読みます。

業界について知れば、労働の実態がより見えてきます。 依頼人へのヒアリングの充実度が増します。

労働時間にカウントされていなければならないはずの手待ち時間なども自ずと弁護士の目に止まり、見逃すことがありません。

そういうヒアリングができるか、事件を自分のものにできるか。
残業代の問題に限らず、重要なのは常にそこです。

代表弁護士加地弘

文責:青葉法律事務所弁護士 加地弘

この10年以上、ほとんど労働事件ばかりを扱ってきました。相談に始まり裁判まで多くの経験を積んでいます。 区役所、上場企業などでセミナー・講演多数。 2016年から労働局の東京都労働相談情報センターからの依頼で、セミナー講師を務めてもいます。

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