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遺族(補償)等給付
労働災害が原因で亡くなった場合に遺族に支給されるのが、遺族(補償)等給付です。
「遺族(補償)等年金」、「遺族特別年金、そして「遺族特別支給金」の3つに分かれており、はじめの2つは年金として継続的に、遺族特別支給金は一度だけ支払われるものです。
ただし、遺族であれば無条件に受けられるわけではなく、色々と条件があります。
そもそも遺族といっても範囲が広いわけですが、大まかにいえば、↓
↑ の順に優先権があり、優先順位の最も高い遺族だけが年金を受け取ることができます。
同じ順位に複数の遺族がいるときは、別々に暮らしている場合は等分しますが、一緒に暮らしている場合は代表者1名が受け取ることになります。
例えばAさんという男性が労働災害で亡くなったとして、Aさんに妻がいた場合は、妻だけがこの年金を受け取ることができ、 子供や両親は何も受け取ることができません。 不条理とも思えますが、そういう制度です。
また、そもそも年金を受けられるのは、
亡くなった労働者の収入によって生活をしていた遺族、に限られます。
例えば、亡くなった労働者が生前に両親に仕送りをしていて、両親がその仕送りを頼りに生活をしていたのであれば、両親はこの条件に当てはまることになります。
一方で、両親が息子(または娘)の収入に頼っていなかった場合、この条件から外れることになり、両親は給付の対象にならないということです。
頼っていたのかいなかったのか、実際にはそう簡単に線引きできるものではないでしょうが、 その判断は労基署に委ねられることになります。
加えてもう一つ、先ほどは説明を簡単にするために省略したのですが、
実は遺族の優先順位は、遺族の年齢や健康状態によって変動します。
先ほどあげた優先順位を正確なものにするなら、以下のようになります。↓
※ 7〜10位の遺族は、60歳になるまで支給が停止されます。
重要なことですが、この順位は常に最新の状況が反映され更新されるものではありません。
例えば59歳の健常な夫(優先権7位)が、1年後に60歳になったからといって、たちまち優先権1位になって年金をもらえるわけではない、ということです。
順位は、労働者が亡くなった時点における状態(遺族の年齢や障害の有無)で決まるものであり、 ひとまずそれで固定されます。
その通りです。不条理に思うかもしれませんが、そういう制度です。
しかし一度決まった順位が永久に固定されるわけではなく、
- それまでこの年金をもらっていた遺族が亡くなった
- それまでこの年金をもらっていた子供や孫が成長して、年齢制限を越えた
- それまでこの年金をもらっていた遺族が結婚した
などの場合は、改めて順位を決め直すことになります。
いくら受け取れるのか
受けとれる遺族の人数によって、支給額が変わります。
2人以上いるときは、別々に暮らしている場合は等分しますが、一緒に暮らしている場合は代表者1名が受け取ることになります。
遺族の数 | 遺族(補償)等年金 | 遺族特別年金 | 遺族特別支給金 |
---|---|---|---|
1人 |
平均賃金の153日分 (175日分になる場合もあり) |
ボーナスなどの153日分 (175日分になる場合もあり) |
300万円 |
2人 | 201日分 | 201日分 | 300万円 |
3人 | 223日分 | 223日分 | 300万円 |
4人以上 | 245日分 | 245日分 | 300万円 |
※ 175日分をもらえるのは55歳以上、または一定の障害にある妻です。
※ 労災保険とは別に、遺族厚生年金や遺族基礎年金をもらえる場合は、 この遺族(補償)等年金の額が調整され、1〜2割ほど減らされることになります。
年金は2、4、6、8、10、12月の6回にわたって分割されて支給されますが、
遺族(補償)等年金は一度に限り、まとまった額を前払いで受け取ることもできます。
該当する遺族が誰もいない場合
さて、年金を受け取れる遺族の優先順位を、 ここでもう一度思い出しましょう。↓
↑注意深く見るとわかりますが、ここであがっている遺族には、だいぶ漏れがあります。 例えば30歳の夫や50歳の両親、または20歳の子供は、このリストのどこにも含まれていません。
また、思い出してください、そもそも年金を受けられるのは、 亡くなった労働者の収入によって生活をしていた遺族、に限られていました。
したがって、該当する遺族が一人もいないというケースも、 それなりにありそうであることが想像できます。
そういうことになります。
しかし全く何も受け取れないわけではなく、年金のかわりに一時金が支給されます。
「遺族(補償)等一時金」や「遺族特別一時金」、そして「遺族特別支給金」です。
この一時金にも、年金と同じく、受け取れる遺族の優先順位があります。↓
いくら受け取れるのか
【最初から遺族(補償)等年金を受け取れる者がいなかった場合】
遺族(補償)等一時金 | 遺族特別一時金 | 遺族特別支給金 |
---|---|---|
平均賃金の1000日分 | ボーナスなどの1000日分 | 300万円 |
【最初は年金を受け取れる者がいたがその後いなくなった場合】
遺族(補償)等一時金 | 遺族特別一時金 | 遺族特別支給金 |
---|---|---|
平均賃金の1000日分から、それまで支払われた年金の額を引いた金額 | ボーナスなどの1000日分から、それまで支払われた年金の額を引いた金額 | なし |
なお、仕事中に起きた労災には遺族補償給付が、通勤災害には遺族給付が支払われます。
さらに、遺族補償給付と似たものとして、複数事業労働者遺族給付というものもあります。 2020年に新設されたものですが、複数業務要因災害と呼ばれるものが原因になった労災について支払われるものです。
複数業務要因災害とはどういうものか、少し複雑なのでこちらで説明しています。
この3つの給付を合わせて、遺族(補償)等給付といいます。 給付されるものは同じです。
遺族(補償)等給付 の必要書類
提出先 勤務先を管轄する労基署
時効 5年
まず全てのケースで必要となるのが以下の書類です。↓
【全てのケースで必要となるもの】
提出書類 |
---|
労働者の死亡を証明する書類 |
亡くなった労働者と受給資格者の関係がわかる戸籍 |
そして、場合によっては求められるのが以下の書類です。↓
【場合によっては要るもの】
提出書類 |
---|
亡くなった労働者と事実婚状態にあった受給資格者がいるなら、その事実を証明する資料 |
請求人と生計を共にしている者が受給資格者にいるならそれを証明する資料 |
一時金ではなく年金を請求する場合、受給資格者が、亡くなった労働者の収入によって生活していたことを証明する資料 |
一時金ではなく年金を請求する場合で、さらに受給資格者に今回の災害が原因で他の年金(遺族厚生年金・遺族基礎年金・寡婦年金など)が支給されるなら、その金額を証明する資料 |
一時金ではなく年金を請求する場合で、さらに受給資格者に一定の障害(おおむね5級以上)にある妻がいるなら、障害を証明する資料 (妻に障害がある場合は常に提出しておいてもいいと思います) |
一時金ではなく年金を請求する場合で、さらに障害があることが理由で受給資格を得た者(一定の障害にある夫など)がいるなら、その障害を証明する資料 |
一時金ではなく年金を請求する場合、マイナンバーカードの写し1点か、通知カード(またはマイナンバー付き住民票)+運転免許証(またはパスポートなど)の2点 ※労基署によっては不要 |
年金ではなく一時金を請求する場合、受給資格者が亡くなった労働者の収入によって生活していたのであれば、その事実を証明する資料 |
それに加えて、それぞれの給付金の請求書です。↓
【遺族補償年金 職場でのケガや病気で亡くなった場合】
提出書類 | サンプル |
---|---|
請求書(様式第12号) (ダウンロード) |
様式第12号記入例 |
平均賃金算出のための書類(様式第8号別紙1と別紙3) (ダウンロード) ※他の労災給付請求時に平均賃金を申告済みの場合は不要 | 様式第8号別紙記入例 |
※複数事業労働者遺族年金の請求書もこちらとなります
【遺族年金 通勤中のケガや病気で亡くなった場合】
提出書類 | サンプル |
---|---|
請求書(様式第16号の8) (ダウンロード) |
様式第16号の8記入例 |
平均賃金算出のための書類(様式第16号の6別紙1と別紙3) (ダウンロード) ※他の労災給付請求時に平均賃金を申告済みの場合は不要 | 様式第16号の6別紙記入例 |
通勤災害に関する事項(様式第16号の8別紙) (ダウンロード) ※他の労災給付請求時に事故について申告済みの場合は不要 | 様式第16号の8別紙記入例 |
【遺族補償一時金 職場でのケガや病気で亡くなった場合】
提出書類 | サンプル |
---|---|
請求書(様式第15号) (ダウンロード) |
様式第15号記入例 |
平均賃金算出のための書類(様式第8号別紙1と別紙3) (ダウンロード) ※他の労災給付請求時に平均賃金を申告済みの場合は不要 | 様式第8号別紙記入例 |
※複数事業労働者遺族一時金の請求書もこちらとなります
【遺族一時金 通勤中のケガや病気で亡くなった場合】
提出書類 | サンプル |
---|---|
請求書(様式第16号の9) (ダウンロード) |
様式第16号の9記入例 |
平均賃金算出のための書類(様式第16号の6別紙1と別紙3) (ダウンロード) ※他の労災給付請求時に平均賃金を申告済みの場合は不要 | 様式第16号の6別紙記入例 |
通勤災害に関する事項(様式第16号の9別紙) (ダウンロード) ※他の労災給付請求時に事故について申告済みの場合は不要 | 様式第16号の9別紙記入例 |
受給資格者が多くなる可能性もあるため、請求は複雑です。 上記のもの以外にも提出を求められるかもしれません。労基署に相談することをお勧めします。